後半では脳や脊髄を作っている「神経細胞」とその働きの元になっている「神経伝達物質」について分かりやすく解説します。
脳の構造や機能については前半で解説していますので、気になる方は是非そちらもご覧ください。
前半はコチラ↓
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脳や脊髄には多数の神経細胞があり、その数は脳全体で約1000億個と推定されています。
また、神経細胞同士は「シナプス」と呼ばれる構造で繋がっており、複雑なネットワークを作り上げています。
では、そんな神経細胞はどんな種類・構造をしていて、どのように情報をやり取りしているのか、分かりやすく解説いていきます。
神経細胞(ニューロン)
神経細胞の構造
神経細胞は、図のようにトゲのある形をしています。
細胞本体は「細胞体」、トゲは「樹状突起」と呼ばれます。
また、神経伝達に関わっている突起を「軸索(突起)」と呼びます。軸索は通常、一つの神経細胞には一本しかありません(途中で枝分かれする場合はあります)。
また、軸索に「髄鞘」と呼ばれる、脂質で出来たカバーがあります。
中には、髄鞘を持たない神経細胞も存在しています。
この髄鞘には、電気を通さない性質があり、
電気信号は髄鞘を飛び越えながら伝わるため、
髄鞘がない場合に比べ、伝導速度が速いという
特徴があります。
神経伝達とシナプス
神経細胞同士は、軸索を介して情報を伝達しています。
神経細胞(軸索)の中では情報は「電気信号」として伝わりますが、
しかし、情報を伝える側(シナプス前ニューロン)の軸索の先端と、受けとる側(シナプス後ニューロン)の神経細胞との間には特殊な構造があります 。
この構造を「シナプス」と言います。
神経伝達物質
神経伝達物質とは
神経細胞が情報伝達の為に合成する物質のことを「神経伝達物質」と呼びます。
神経伝達物質がシナプス前ニューロンの軸索の先端から分泌されます。
シナプス後ニューロンには神経伝達物質を受けとる受け皿(受容体)があり、ここに神経伝達物質が結合することで、情報の伝達が行われているのです。
神経伝達物質には、神経を興奮させ、その働きを増強するもの(興奮性伝達物質)と過剰な興奮を抑制するもの(抑制性伝達物質)とがあります。
神経伝達物質の主な種類
神経の働きを増強するもの(興奮性伝達物質)
ドパミン | 「快感や多幸感を得る」 「意欲を作ったり感じたりする」 「運動調節に関連する」 といった機能を担う脳内ホルモン。 |
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ノルアドレナリン | ドパミンが代謝されてできるホルモン。 体性感覚野にて感覚の認識に関わる。 海馬にて記憶の形成にかかわる。 前頭前野にて注意や衝動性の制御にかかわる。 後述するアドレナリンと同じ作用も有する。 |
アドレナリン | ノルアドレナリンがさらに代謝されてできる ホルモン。 副腎髄質から分泌され、交感神経系を刺激する。 その結果、血圧上昇、心拍数増加、呼吸数増加、 血糖値上昇、消化管運動低下、瞳孔の散大を 引き起こす。 |
アセチルコリン | 脳内では、記憶の定着や、思考、集中力の維持、 睡眠・覚醒の調節にかかわる。また、 ドーパミンを分泌する神経の働きを調節する。 副交感神経系を刺激する。これにより血圧低下、 心拍数低下、消化管運動亢進、瞳孔の収縮 を引き起こす。 |
セロトニン | ドパミンやノルアドレナリンの働きを調節し、 感情や攻撃性を制御すると考えられている。 大部分は腸管に存在し、腸の運動を調節したり、 血液中では血小板の働きを調節したりしている。 |
グルタミン酸 | 大脳皮質や海馬、小脳に広く分泌され、 その働きの興奮性の調節を担っているとされる。 また、神経が損傷した時の再生(可塑性)に関わるとされる。 グルタミン酸により神経が興奮しすぎると、 神経細胞は自ら死んでしまう。 この細胞死が脳梗塞やてんかん、緑内障の原因とされる。 |
神経の働きを減弱するもの(抑制性伝達物質)
γーアミノ酪酸 (GABA) |
興奮性伝達物質の刺激が一定量を越えるか、 興奮が一定時間を越えると分泌される。 過剰な興奮を抑える役割をしている。 精神の安定や睡眠の質に深く関わっている。 |
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グリシン | 脳内ではグルタミン酸の働きを調節 脳幹や脊髄に多く存在し、骨格筋や 平滑筋の動きを制御している。 |
この他にも神経伝達を担う物質はたくさんあります。
これらの物質が、バランスを保ちながら働いていることにより、
私達の行動や感情、記憶、睡眠、そして身体の機能全体を
制御・調節しているのです。
しかし、生活習慣の乱れや加齢などの原因で、
このバランスが崩れてしまうことがあります。
神経伝達物質のバランスの乱れが原因の疾患
うつ/双極性障害
長期間ストレスにさらされる事による
ノルアドレナリンやセロトニンの減少が
原因の一つで、これが意欲の低下や気分の落ち込みに
関係しているとされています。
統合失調症
幻覚や妄想などの症状はドパミンの過剰分泌が原因と
考えられています。また、セロトニンの過剰な働きが原因で、
意欲の減退や感情が鈍くなるなどの症状が
起こるとされています。
パーキンソン病
パーキンソン症候群
ドパミンの量が少なくなると、筋肉を上手く動かせなくなり、
手足がこわばる、震える、姿勢が保てないなどの症状が出ます。
このような症状は総称してパーキンソン症候群
(パーキンソニズム)と呼ばれ、特に脳内の
ドパミンを分泌する神経細胞が減る事が原因
の場合をパーキンソン病と呼びます。
アルツハイマー型認知症
アセチルコリンが減少することにより、
記憶・認知能力が低下するとされています。
また、神経細胞内に異常なタンパク質が蓄積することにより、
グルタミン酸が過剰に分泌され、精神の乱れや
さらなる神経細胞の障害を引き起こす事が
知られています。
以上、神経伝達物質とそのバランスが乱れる事によって起こる疾患
について解説しました。
各々の疾患については、他の記事でも解説していますので、
より詳しく知りたい方は各々のリンクからご覧下さい!