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【健康事典】《第10章ー免疫》 防御の要!免疫機能

私達の身体は常に、

細菌やウイルスなどの病原体や紫外線、化学物質といった

「身体にとって有害な物質」に晒されています。

それらの脅威から身を守るために備わっている

仕組みを「免疫」と呼んでいます。

第0章ー10では、そんな免疫機能について

分かりやすく解説します。

①代表的な免疫機能による作用


私達の身体は、風邪や感染症、アレルギーなど
異物に晒されると様々な症状が発現します。


例えば、鼻やのどに異物が入って来ると、
体内に入れないように鼻水が出ます。


また、鼻水や咳は体内で処理された異物の
排泄時にも起こります(この時は黄色っぽい鼻水
痰を伴う咳となります。)

食べたものに有害な物質や雑菌があると、
それを排泄しようと嘔吐下痢を引き起こします。

実はこれらの症状は、
異物を身体から排除しようとする
免疫機能によるものです。

②免疫機能の基本的なメカニズム

※クリックで拡大

貪食細胞と抗原提示(自然免疫)

身体に異物(細菌やウイルス)が侵入すると、
まず能力を発揮するのが、
「樹状細胞」「マクロファージ」とよばれる細胞です。
異物を認識すると積極的に細胞内へ取り込みます。
そして細胞内で合成した「活性酸素」によって
異物を分解します。

この働きが、異物を"食べて"いる様に見える事から、
「貪食(どんしょく)細胞」とも呼ばれています。

また、マクロファージには、分解した異物の一部を細胞表面に出し、
他の細胞に情報として伝達する働きもあります。
これは「抗原提示」と呼ばれます。

この一連の働きは、生物には本来備わっている
機能であることから、「自然免疫」と呼ばれます。


T細胞の働き(獲得免疫)

抗原提示を受けるのは
主に「ナイーブヘルパーT細胞」と呼ばれる細胞です。

異物の情報を受け取ったナイーブヘルパーT細胞は、

「1型ヘルパーT細胞(Th1細胞)」
「2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)」
「17型ヘルパーT細胞(Th17細胞)」

の3種類の細胞へと変化し、
それぞれに異なる役割を果たします。

1型ヘルパーT細胞
細胞を直接攻撃し死に至らしめる
「キラーT細胞」を活性化させる。
ウイルスが感染した細胞、ガン細胞に対して
その能力を発揮する。


2型ヘルパーT細胞
「抗体」を産生し、貪食細胞の働きを促す
「B細胞」を活性化させる。
細菌やウイルス、アレルゲンなどに対して
効果を発揮する。

17型ヘルパーT細胞
粘膜や消化管、血管の表面に「好中球」
呼び出し、外からくる異物の排除を促す。

T細胞がどのタイプに変化するかは、
異物の種類によって決まっています。

また、これらT細胞の働きに程よくブレーキをかけ、
コントロールする「制御性T細胞(Treg)」と呼ばれる
細胞もあります。

これらの働きは、異物の情報を「獲得して」初めて
機能する事から、「獲得免疫」と呼ばれます。


免疫記憶

一部の免疫細胞には、一度入ってきた異物の
情報や攻撃方法を記憶する能力が備わっています。
これにより、2回目以降は1回目より早く
異物を排除することが出来るのです。

この能力はT細胞やB細胞のみが持つとされていましたが、
近年の研究では、自然免疫にもあると言うことが
明らかになっています。


B細胞の働き

2型ヘルパーT細胞により活性化したB細胞は、
「形質細胞」と呼ばれ、「抗体」を産生する事が
出来るようになります。
抗体は異物ごとに専用に作られます。
作られた抗体は異物に結合し、これが目印となり
マクロファージなどの異物の排除の助けとなります。


自己免疫疾患

そんな免疫機能も、完璧ではないことがあります。
遺伝子に何らかの異常があると、免疫細胞の
攻撃の対象が自分の組織に向いててしまうことが
あります。攻撃された組織は壊され、
周囲に重い炎症を引き起こします。
このような異常を引き起こす疾患は
「自己免疫疾患」とよばれ、

・関節リウマチ
・全身性エリテマトーデス
バセドウ病
1型糖尿病

などがあります。

まとめ

免疫機能の仕組みはとても複雑で、本ブログで解説しているのは
その代表的な一部分にすぎません。
まだ分かっていない部分もあり、研究が続けられています。
本章では専門用語を多用しているため、以下にそれについてもまとめています。


専門用語一覧

樹状細胞 貪食細胞の一種。異物を取り込んで排除する。
抗原提示能力は持たない。
マクファージ 貪食細胞の一種。異物を取り込んで排除する。
抗原提示能力を持つ。
貪食 異物を細胞内に取り込み、活性酸素を産生して
異物を破壊する排除の仕組み。
抗原提示 取り込んだ異物の一部を細胞表面に出し、
T細胞などに認識させる仕組み。
ナイーブヘルパーT細胞 変化する前のヘルパーT細胞。抗原提示を
受けて1型、2型、17型に変化する事ができる他、
Treg細胞にも変化できる。
1型ヘルパーT細胞 キラーT細胞を活性化させる役割をもつ。
2型ヘルパーT細胞 B細胞を活性化させる役割をもつ。
17型ヘルパーT細胞 粘膜や消化管、血管の表面に好中球を
呼び出す役割をもつ。
好中球 粘膜や消化管、血管の表面に駆け付け
異物を排除する貪食細胞の一種。抗原提示
能力は持たない。
自然免疫 貪食細胞による異物排除の仕組みで、
多くの生物に元来備わっている。
獲得免疫 キラーT細胞による細胞の破壊やB細胞による
抗体産生など、生物が異物の情報を得て初めて
獲得する免疫の仕組み。昆虫や甲殻類などの
無脊椎動物には備わっていない。

〈参考文献〉 Yoshida K, Maekawa T, Zhu Y, Renard-Guillet C, Chatton B, Inoue K, Uchiyama T, Ishibashi K, Yamada T, Ohno N, Shirahige K, Okada-Hatakeyama M, and Ishii S., "The transcription factor ATF7 mediates lipopolysaccharide-induced epigenetic changes in macrophages involved in innate immunological memory", Nature Immunology, doi: 10.1038/ni.3257

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